熊野灘に面する千畳敷の断崖絶壁から、楯ヶ崎を見下ろす...

「石碧千尋、其石皆斬石、森列屏立して大海の怒涛す」

紀伊後風土記にはこう記されている。

初めてこの風景を見たとき、私は形容しがたい圧倒的な迫力を感じ、言葉も無く立ち尽くすことになる。

「このような風景がこの日本にあったのだ...」

圧倒される風景に感動し、岩の上に座って長い時間ここに留まった。

この岩槐の高さは80メートル以上、周囲は600メートル近くあるという。その大きさはとても写真で伝わらないが、全国にある柱状節理の風景はここを見てしまうと其の価値を失うかもしれない。それほどその規模においても、人を圧倒する風景の完成度においても、この楯ヶ崎は驚きである。楯ヶ崎は、国道311号からアップダウンを繰り返す山道を歩き、やっとたどり着いた末に其の姿を現す。この苦難の道程があるからこそ、この風景の感動は増幅されるのだろう。