早朝の浄土が浜で夜明けを待つ。

静かな波音だけが聞こえる世界だった。

岩手県の海岸線をどこまでも北上して、青森県種差海岸に立ち寄る。

旅心はどこまでも走らなくては治まらなかった。

最後にたどり着いたのは、本州の最果て下北半島尻屋崎だった...

夜明け前、浄土ヶ浜にて...

2日目 2007年11月4日 本州の最果て、尻屋崎へたどり着く旅...

宮古のホテルを4時45分に出て、真っ暗な浄土ヶ浜に向かう...

この日の日の出は6時6分だ。

浄土ヶ浜パークホテルの脇から浄土ヶ浜に降りていった。

5時21分の浄土ヶ浜...

静かな波音だけが聞こえる世界。

空一面にあった、星はだんだん消えていく...

海の彼方から朱に染まって、海面を照らす。

白い威容をほこる岩礁は影となり、光を遮る。

極楽浄土に夜明けがあるのかは知らないけれど、

心洗われる風景だった...

まもなく夜が明ける...

11月の日の出は重茂半島から上る。

455.9mの月山から太陽が顔を出した。

時間は6時20分だった...

日の出の写真は最近はあまり好きではない。

どこで撮っても同じような写真になるから...

それなりに工夫はするがイマイチだ。

夜明け前の写真を撮った同じ場所での写真だ...

日の出を見るために、人が集まってきていた。

どこで写真を撮ればいいか、聞いてくる初老のカメラマンがいた。

ハッセルブラッド一式のすごい機材だった。

今撮っている、このあたりと言っても納得しなかったので、パンフレットに良く出てくる場所を教えた。ただし

立ち入り禁止だし、断崖でもあり危険なので、お薦めしないとも言った。

やはり、予想通り立ち入り禁止のロープを無視して彼は入っていった...

透き通る水が、明るくなるグラデーションの空を映していた...

青と影の世界...

色彩の変化をただ眺めていた...

静寂の世界に鳥が舞う...

遠く、重茂半島を覆っていた雲が風に流されて行く...

一度日が昇ってしまうと、もう少し上がって景色全体を照らしてくれるまで少しタイクツ...

現状のデジタルカメラのダイナミックレンジの限界で、つまらない画になってしまう。

影で表現するのは嫌いではないが、実際自分の目で見た風景と違いすぎるのだ。

先ほどの初老のカメラマンが撮影ポイントから下りてきた...

「いいアングルだったけど、人が邪魔でね...」

と言った...

ちょっとムッとしたので、言わなくて良いことを言ってしまった。

「それはしょうがないですね。あなただけの場所じゃないですし...」

浄土ヶ浜の写真は2004年に訪れた時にコンデジ(SONY P-100)で撮った写真(下)が一番気に入っている。

撮った時間は7時くらいなので似たような感じ。

でも9月と11月の差は大きい。9月はもっと陽が高い。

かもめや鵜が羽を休める岩場...

のんびりパンをかじりながら眺めていた。

3年前に撮った場所と同じ場所で撮ってみた。

全く写真の腕が上がっていないのがよくわかる...

撮るのはコンデジだったが、夢中で撮っていたような気がする。

かもめもいい感じで飛んできたし、空には雲があった...

いい写真を撮ろうなんて不相応な思い上がりは捨てることだ。

北山崎の展望台に立つ。

陸中海岸のハイライトと言われる風景である。

朝日に岩礁が照らされる...

まぶしい海岸線を見下ろす...

なんともすごい岩礁風景が凝縮されている。

浄土ヶ浜をあとにする...

北へ、北へ...

走ろう...

何かが心をかきたてる...

矢越崎と言われる岩礁...

アイヌの伝説から付いた名前だと言う。

高さ200メートルもの断崖が、約8キロにわたって連なる北山崎。

波打ち際までは片道753段の遊歩道が続いている...

次こそ行って見たいと思う。

北山崎で、刺身定食の朝ごはんを食べた。

まだ、9時だったので本当は準備中の店を急かして作ってもらったのだ...

普代付近で県道44号から国道45号に再び入る...

三陸鉄道北リアス線と国道45号が交差しながら縫うように走っている...

海を見下ろし走る、快走路...

冷たい風が気持ちいい。

陸中野田の十府ヶ浦海岸が見えてきた...

国道45号は内陸を行き、海沿いを行く県道は小袖海岸を取って再び久慈で合流する...

その先は青森県である...

北へ、北へ...

急き立てられるように走っていた...

浄土ヶ浜を出て、国道45号を北上する。

最終目的地は260Km先の下北半島尻屋崎である。

下北に入る前に絶対行きたいところは種差海岸だけなのだが、とりあえず鵜ノ巣断崖と北山崎に寄ろうと思っていた...

思っていたのだが、このあたりの45号は快走路である。鵜ノ巣断崖は通り過ぎてしまった。

北山崎へ向かうカンバンはそこらじゅうにあるので、無事県道44号に入って北山崎を目指す...

北山崎付近は、森の中の一本道を快走できる道路である。

陸中海岸 北山崎へ